高校生時代の話(生徒総会編)

出席日数、授業時数

 かなり長い期間、討論、生徒総会、というパターンが続きましたが、やがて学校側からこのままの状態では出席日数や授業時数が不足し、生徒全員が留年しかねない、という警告が発せられました。

 これについては教師側の陰謀だとか、ごまかしだという生徒も多くいました。まさか全校生徒が同時に留年なんてあり得るわけがない、と高をくくる生徒もいましたが、多くの真面目な生徒は動揺しました。特に受験を間近に控えた3年生は辛かったと思います。

 現在自分自身が教員となってこの時間的な問題を振り返ってみると、学校教育法や施行規則、教育課程等にこれについての記述があって、おおむね教員側の警告は正しかった、と言わざるをえません。

 当時の管理職は全員進級不可能という事態が近づいて、かなり苦悩していたと思われます。またそうなれば自身の責任問題にも発展したと思われます。

 そういった警告?の結果、生徒総会の議題の中に、これから授業をどうするか、という議題が加わりました。11月だったと記憶しています。


生徒総会

 忘れもしない11月のある日、事前のクラス討論で午前授業、午後討論というパターンを考え、クラス決議を行いました。

 クラスの決議は出ましたが、実際に生徒総会で発言するのにはかなりの勇気が必要です。当然2年生や3年生の意見の方が筋が通っていることが多く、1年の意見は軽視されがちでした。

 しかし授業時数の事を真面目に考えれば、午前授業はやむを得ない選択であることを私は確信していました。

 問題は誰が提案するかですが、総会の雰囲気に任そうという主張が強く、クラス討議はそこで終了。もちろん発言できる者がいたら、しても良いとの条件が付いていました。

 午後の生徒総会、生徒の集まりが悪く、なかなか定足数に達しません。議長はあまりやる気がなさそうでした。当然だと思います。

 これまで何回となく繰り返してきた、平行線の討論を今日も行うわけです。しかし私は心臓をドキドキさせながら発言の機会をうかがっていました。

 気の小さい私が何故そんな気になったのか、今もってよくわからないのですが、一種の正義感であったかもしれません。

 討論は遅々として進みません。代議員の中に主張の強い生徒がいるのか、いつも提案されるのは現状続行です。

 議長が修正案ありますか?と全員に問いただしたとき、上級生の一人が午前授業、午後討論を主張しましたが、その理由があまりはっきり聞き取れず、このままではまたもやうやむやに終わってしまうように思えました。

 議長がその他意見ありますか?と再度尋ねました。私は周囲を見回しました。誰も手を挙げません。このままではまた同じ事の繰り返しだ。と思った瞬間吹っ切れたように手を挙げました。

 全員の前でしゃべるのはとんでもない緊張を強いられます。ましてや上級生の前です。下手な事を言うと、今の国会のように容赦なくヤジが飛んできます。

 しかしあまりに緊張していたのか、ヤジは聞こえませんでした。私は、このままでは全員が留年の恐れがあること、討論を続けないと言っているのではなく、午後には時間を設けること、クラスで決議したこと、授業も大事であること、等を小さな声でしゃべりました。

 幸いにもマイクがあり、いつもと違う生徒が出てきたので関心を持ったのか、上級生の多くが主張を聞き取ってくれたようでした。と感じたのは、発言を終わったとき、パラパラではあるが、上級生側から拍手が涌いたからです。

 結局その修正案が採択されました。誰もが思っているのだが発言に責任を負うのは大変なので、多くの場合、露骨に主張するのはためらう人が多い、ということを実感しました。民主主義の難しさと、個人の責任を強く意識した生徒総会になりました。

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私の進路への影響


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