空飛ぶ円盤の話

初めてのUFO

 私が中学生の頃は、宇宙時代の幕開けだったせいか、宇宙生命(宇宙人)と空飛ぶ円盤は話題の花形でした。各種のSF小説を乱読したのもこの頃です。

 ジョン・アダムスキなる人物が書いた、金星人や火星人との遭遇の話がまことしやかに伝えられ、私もご多分に漏れず、高校時代にこれらの本を読み漁りました。

 宇宙人は本当にいるのだろうか。空飛ぶ円盤は実在するのだろうか。もし存在したらその形態は、生き様は、と想像をたくましくしていました。

 そんな中で、ある時空飛ぶ円盤らしきものを見ました。

 中学生だったある日、東京都目黒区のある4階建てのアパートの屋上で数人の友人と遊んでいたときです。遊び疲れて、屋上に大の字になって横たわっていると、必然的に空が見えます。青空でした。

 とその時、天頂になにやら光る点を発見。昼の3時ぐらいです。今から45年ぐらい前の事です。

 私以外の友人も同時にそれを見ています。必死に見つめますが、かなり高いのか輪郭はさっぱりわかりません。ただ青空の中で光っているだけです。しかも同じ場所から動きません。

 家にある双眼鏡を持ってきて覗いてみましたた。しかし遠いせいか、天頂のせいか、手が震えてうまく焦点が合いません。

 見えたと思うとすぐに視野からはずれてしまいます。しかしなんとか見ようと努力している内に、なんとその光る点からさらに小さい黒い点が射出されるのを発見。

 いわゆる大型の空飛ぶ円盤から子機が射出される状況そっくりです。私は心底驚き、ここに至ってようやく、もしかしたら本当に空飛ぶ円盤を見ているのかもしれない、と本気で信じ始めました。

 夕方になって、その光る点は徐々にその光度を減衰し、やがて見えなくなってしまいまった。あれはいったい何だったんだろうか。今でも不思議に思えるし、昨日の事のように思い出せます。

 現在私自身物理を専門とする身であるから軽はずみなことは言えませんが、一番近いのは静止衛星だと思われます。

 しかしあの時代にそういった衛星が存在していたとは思えません。しかも子機を射出する静止衛星なんてありえません。いまだによくわからない記憶です。


2回目のUFO

 2回目は高校生の頃です。私の父は渓流釣りが好きで、よく一緒に連れていってくれました。

 高校生になったある日、父と共に伊豆の天城山系にヤマメ釣りに出かけました。朝の4時頃、空が白み始める前、身支度をして宿を出ました。

 雲一つない夜空。理系の私は、思わず夜空を見上げ、星座を確認しようとします。空は晴れ渡り、星がよく見えます。

 とその時、なにやら光る点を発見。星と星のあいだを、スーッスーッと動いています。

 その頃には夕方や明け方に人工衛星が太陽の光を反射して見えることがある、ということは知っていました。何回かその軌跡をカメラで撮影したことがあります。ただしその軌道は星と星との間を動きますが、明らかに直線です。

 しかしその時見えている光る点は、なんと空飛ぶ円盤として紹介されている本の通り、ジグザグに動きました

 これは不思議な現象です。人類が創造した乗り物にはすべて慣性の法則が働き、その運動方向を変化させようとすると、かなりの力が必要で、必然的にジグザグ運動のような、鋭角に曲がることは不可能であることを知っています。

 このジグザグ運動は私の父親も確認しています。ただ父親は釣り好きで、早くポイントに行きたがっていたこともあって、そのUFOがその後どちらに飛んでいったのか、確かめる事は出来ませんでした。残念ながら、それ以来UFOとおぼしきものに遭遇した経験はありません。

 あれはいったい何だったのだろうか。これまた今もってまったく謎です。

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