プロフィール

(詳細版の4)

 進学校から次に転勤したのが、進学校と対極の位置にある学校でした。特徴は極端な低学力です。小学校3,4年生から高学年辺りで学習に躓いた生徒が多数入学しています。

 もちろんごく普通の子もいましたが、学習に遅れがちな生徒が多いため、どうしてもそちらに授業内容が片寄ってしまい、実力を伸ばしきれない矛盾を感じます。

 ではその学習の遅れとはどのようなものかというと、算数で言えば分数や少数はもちろん、整数の割り算が出来ません。自分の名前以外の基本的な漢字が書けません。ノートを見ると、板書した文字が罫線の枠からはみ出したり、意味不明な漢字に化けていたりします。英語のアルファベットが書けません

 このような子たちが、1クラス40人の中に10人以上います。しかもこのような子達に限って、欠席、遅刻、早退が多い上、出席しても私語、携帯いじり、居眠り、さらには授業妨害を行い、入学時の1年生の指導は、学習指導よりも授業を受けさせる指導に力が注がれます。

 学業不振校では、何故これほどまでに勉強が分からないのか、というのが疑問でした。能力差だよ、と簡単に言ってのける先生もいました。もちろん人間の能力は千差万別ですから、学習という部分での能力が人よりも少し劣っている人がいてもおかしくないとは思います。

 しかしそれ以外の部分で、生徒の生活状況や家庭環境、小中学校での学習経験に起因するような要素はないのかな、と常々考えていました。

 よく言われていたのは、家庭の経済力による格差です。大変残念なことですが、これは実際に感じるところがありました。

 また家庭内の不和や小中学校での人間関係の不調によるものもあると思います。個々の生徒については、また別の機会で取り上げることが出来るかもしれませんので、ここでは深入りを避けます。

 しかし、世間一般が想像する以上の様々な問題を抱えている生徒が入学していました。この子たちの将来はどうなるんだろうか、という思いを胸に秘めて授業を行っていました。

 50代で学業不振校に転勤し、まあ大変ながらもそれなりに充実した生活を送っていましたが、定年4年前の昨年の春、妻の病死という、思ってもみない出来事に遭遇し、突如父子家庭となってしまいました。

 仕事と家事の両立という難題が降りかかり、職場でも神経を使い、帰宅しても気持ちが休まらない、という日々を約1年過ごし、年金やら退職金やらのシミュレーションを何回か行った後、鬱病になりそうだという思いから脱却するために早期退職に踏み切りました。

 当然家計は大赤字で、これまでの貯蓄を取り崩す日々が続いていますが、精神的には落ち着いて、病的な症状はなくなりました。

 最終的な決断は、鬱病になって家で鬱々としていたら子供に迷惑がかかる、多少金銭的に厳しい状態でも父親の精神状態が落ち着いていれば、子供も安心して暮らせるだろう、という思いでした。

 3月に退職し、現在6ヶ月が経過しています。今はわずかながらの家計の足しになればと、非常勤講師を行っています。

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